Concept of "FutureCity" Initiative

「環境未来都市」構想の目指すもの

「環境未来都市」構想の背景

世界の都市人口は急速に増加をみせ、現在世界人口の半数を占めていますが、国連によると、その割合は2050年には約7割、約64億人に達すると予測されています。こうした都市化の傾向は、アジアやアフリカといった開発途上地域で顕著に見られ、急激な都市化に伴い、様々な環境問題や都市問題を生じさせています。21世紀は都市の時代といわれますが、都市環境に対する負荷を増加させずに、いかに生活の豊かさを実現するかという問題は、都市を基軸とした人類共通の課題です。

他方、課題先進国といわれる日本では、少子化とともに、急速に高齢化が進み、2050年には、65歳以上の高齢者が4割に達すると見込まれ、社会の活力の維持や高齢者が健康で安心して充実した生活を送ることのできる都市・地域づくりが喫緊の課題となっています。高齢化の問題は、アジア諸国を始め他の多くの国々が近未来に直面すると予測され、日本における取組は、人類共通の課題解決に示唆を与えるものといえます。

このように、都市をエンジンとして、環境、高齢化対応、経済・社会の活性化という人類共通の普遍的課題について、問題認識の共有、課題設定の普遍化、解決の枠組みを考えることは、極めて重要です。
我が国は「新成長戦略」(2010年6月18日閣議決定)の21の国家戦略プロジェクトの一つとして『「環境未来都市」構想』を位置付けました。この構想は、人類共通の課題に挑戦し、世界に先駆けて解決モデルを提示するものといえます。

「環境未来都市」構想の趣旨

「環境未来都市」構想は、限られた数の特定の都市を環境未来都市として選定し、21世紀の人類共通の課題である環境や超高齢化対応などに関して、技術・社会経済システム・サービス・ビジネスモデル・まちづくりにおいて、世界に類のない成功事例を創出するとともに、それを国内外に普及展開することで、需要拡大、雇用創出等を実現し、究極的には、我が国全体の持続可能な経済社会の発展の実現を目指すものです。

環境未来都市は、成功事例を創出するための社会経済システムイノベーションの実践の場となります。国は、環境未来都市に対して、関連予算の集中、規制・制度・税制改革などの支援を行う予定です。

「環境未来都市」構想の実現に当たっては、国内外に広く開かれたオープンソースイノベーションを前提とし、コンセプト形成、要素技術やシステムの検討・開発、実践などの各段階で、国内外の経験を共有しながら知のネットワーク化を進め、国内外への普及展開を図っていきます。

「環境未来都市」構想の基本コンセプト

「環境未来都市」構想の基本コンセプトは、「環境・超高齢化対応等に向けた、人間中心の新たな価値を創造する都市」を実現することです。すなわち、我が国及び世界が直面する地球温暖化、資源・エネルギー制約、超高齢化対応等の諸課題を、持続可能な社会経済システムを構築しつつ、また社会的連帯感の回復を図りながら解決し、新たな価値を創造し続ける「誰もが暮らしたいまち」「誰もが活力あるまち」を実現し、人々の生活の質を高めることです。

持続可能な経済社会を実現するためには、環境、社会、経済という3つの側面が不可欠です。本構想における「誰もが暮らしたいまち」「誰もが活力あるまち」は、3つの側面が一定以上の水準で満足されていることを前提として、よりイノベイティブにこれら3つの側面から価値が創造される都市と定義されます。

個別都市の将来ビジョンおよび取組

個別の環境未来都市は、上記の基本コンセプトの実現に資するよう環境価値、社会的価値、経済的価値という3つの価値のトータルの創造量の最大化を目指して戦略的な将来ビジョンを策定します。将来ビジョンの策定は、目指すべき将来の姿からのバックキャスティングの発想とともに、実現可能性を高めるべく、現状からのフォアキャスティングの発想も取り入れて描くことが必要です。また、それぞれの都市特有の自然的社会的条件等を踏まえて、多様性や独自性を最大限発揮できるよう策定することが重要です。

各都市においては、将来ビジョンの実現に向け、環境及び超高齢化対応に関する分野の取組を必須とし、これに加えて、都市の独自性や比較優位をさらに高めることができる分野における取組を、国内外の都市との強力な連携の下で推進します。取組の実施にあたっては、国内外の他の都市の成功事例を吸収するなど、世界の英知を結集しつつ、それぞれの分野の取組を効果的に統合して、単なる実証実験にとどまらない、継続的に価値を創造する社会経済システムイノベーションを実現します。成功事例を継続的に創出することにより、補助金に依存した体質から脱却し、自律的発展の仕組みを実現することにより、国内外に適用可能なモデルを確立します。

「環境未来都市」構想の推進方策

本構想を成功に導くには、着実なプロジェクトマネジメントの実施、パワフルでスピード感のある執行体制の構築、強力な都市間連携の下での推進が重要です。

本構想におけるプロジェクトマネジメントは、
(1)構想全体(効果的な推進の視点)
(2)各都市(取組全体の経営の視点)
(3)各取組(進捗管理の視点)
の3つのレベルで必要になります。

各レベルにおいてPDCAサイクルを回し、着実にプロジェクトマネジメントを行うことにより、成功の可能性を高めることが出来ます。

成功事例の創出やその国内外への普及展開には、パワフルでスピード感のある執行体制が不可欠です。国レベルでは、各都市に対して、助言を行うとともに、推進組織を設置し、資金提供、規制・制度改革の調整等を行います。各都市レベルでは、産民学・自治体によるコンソーシアムを組織します。

都市間連携を強化することにより、成功事例の高度化と普及展開の迅速化が期待されます。国では、国内外の成功事例の収集・整理・分析を行い、その情報を整理・発信するとともに、知の交流のための国際フォーラム等の場の整備を行うなど、国際的な知のプラットフォームを構築します。各都市では、上記のプラットフォームも活用しながら国内外の他の都市との成功事例の相互交流、市民レベルを含めた継続的な連携・協力関係の深化を図ります。