【内閣府地方創生推進事務局長賞】
美濃市の宿泊者数が過去最高に!
その立役者たちに官民連携のポイントを聞きました
本プラットフォームでは、SDGsの達成や地域課題解決などに向けた官民連携取組の普及展開により、地方創生・持続可能なまちづくりを実現し、官民連携取組のさらなる発展を目指して、官民連携取組事例を募集しています。
今回は、「歴史的資源の活用と古民家再生でつなぐ持続可能なまちづくり支援」で2023年度内閣府地方創生推進事務局長賞を受賞した「岐阜県美濃市」、「株式会社十六銀行」、「みのまちや株式会社」の皆様にインタビューを行いました。
【取組概要】
美濃市は、ユネスコ無形文化遺産の「本美濃紙」や「うだつの上がる町並み」などの歴史的資源の継承、観光開発や空き家となった古民家の利活用が課題でした。そこで、行政の「美濃市」、地域金融機関の「十六銀行」、古民家再生ノウハウを有する事業者と地場事業者が共同出資し設立した「みのまちや」が中心となり、美濃の歴史的資源を未来に繋ぐ目的のもと古民家再生事業を開始し、多様な事業者がそれぞれの強みを最⼤限発揮しながら地域課題解決に取り組んでいます。
課題としては、
①歴史的価値のある建造物をどのように活用し、歴史や文化を継承しつつ観光産業の拡大及び地域の賑わい創生につなげるか
②新型コロナウイルス感染症による観光産業の落ち込みからの復活を牽引できる人材(観光プロデューサー)の不足
③来訪者の長期滞在を実現するための市の強みを活かしたソフト事業の不足
という3つの大きな課題がありました。美濃市は人口2万人弱の小さなまちであり、人脈やノウハウが少なく、行政だけでは課題を解決することが難しい状況でした。(美濃市)
①については、PPPやPFIの内閣府の専門家派遣事業を活用し、地域総合整備財団(ふるさと財団)の公民連携アドバイザーより活用策のアドバイスを得て、公募型プロポーザルを実施し、事業者を選定しました。
②③については、十六銀行から知見やノウハウを有する「HIS」や「キッチハイク」を紹介いただきました。(美濃市)
PPP・・・Public Private Partnership:官民連携事業
PFI・・・Private Finance Initiative:民間資金等活用事業
理解を深めるにあたり、
・歴史的建造物を滞在型観光に資する建造物に変え、それらの建造物が地域の賑わいに寄与すること
・価値ある歴史的建物を、解体ではなくリノベーションし適切に活用すれば、美濃市の活性化や交流人口拡大につながること
・美濃市への来訪者が増えれば、地域経済の循環にもつながること
などの内容について、みのまちや主導のワーキンググループや地域住民対象の説明会等を通じて説明しました。さらに、寄付をされた建物の所有者には何度も訪問説明をして事業の理解を得られるよう努め、丁寧に確認しながら進めたことが、物件所有者の安心感につながったと思います。(美濃市・みのまちや・十六銀行)
資金調達については、リスクデザインを十六銀行に相談し、設備投資に関してとても良い条件でスタートできたことが大きな推進力となりました。また、開業当初の運転資金が少ない中でコロナ禍に直面し、運転資金の確保に苦労しましたが、そのような状況下でも十六銀行からの提案により、リスケジュールや利子補給の補助金などについて助言いただいたことで資金調達がうまくいったと思います。(みのまちや)
その他、下記の補助金や交付金等を活用しました。
(美濃市)
地方創生拠点整備交付金等農山漁村振興交付金 ※古民家再生事業
総務省の地域活性化起業人制度(特別交付税措置あり) ※観光人材活用事業
デジタル田園都市国家構想交付金(地方創生推進タイプ) ※保育園留学事業
(みのまちや)
岐阜県サテライトオフィス誘致推進補助金
美濃市サテライトオフィス拠点整備補助金
訪日外国人旅行者周遊促進事業費補助金
美濃市の保育園留学事業は関係人口を創出する取組となりますが、2022年度の1月から開始し、現在までに50組以上の家族にご利用いただいております。その中にはリピーターもおり、一定の効果は出ていると認識しています。さらに、保育園留学では、1家族あたり約2~3週間滞在するため、地域への経済効果(観光消費額)が高いと認識しています(宿泊、ワーケーション、飲食、体験等)。(美濃市)
参考までに、美濃市の宿泊者数は下表の通り、コロナ課で落ち込んだ観光産業は、2022年度以降回復しており、2023年度は過去最高値を記録しています。(美濃市)
年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|---|---|---|
宿泊者数 | 13,668人 | 8,513人 | 10,158人 | 19,082人 | 21,597人 |
官民連携により、官と民、それぞれの強みを最大限に発揮できたことだと思います。また、財政規模の小さい本市にとっては、国の地方創生に関する制度を効果的に活用したことも良かったと思います。加えて、本事業におけるすべての古民家が、中心市街地に徒歩圏内で集中しており、保育園留学の参加者がサテライトオフィスやホテルを利用できるコンパクトな立地要件も他地域と違う強みであると思います。(美濃市)
地域主体という事業構造を構築でき、それを官と民がうまく連携し支援することができたことです。また、そのような官と民の支援体制をみのまちやだけではなく、後発の民間事業者も後押しし、まちづくりの機運が波及していったことです。(みのまちや)
美濃市には「うだつの上がる町並み」や「美濃和紙」など地域資源が豊富にある中で、美濃市が地域課題について危機感を持って、最初に行動に移された熱意や意欲が、民間事業者を引き付けたのだと思います。(十六銀行)
多くの地域で人口減少問題がある中で、行政のできることは限られています。民間と連携し、相乗効果を生み出し、新たなことにも粘り強く取り組み、地域住民の皆様や議会、市職員との対話によって、推進力を高めたいという思いがありました。また、人口減少が避けられない状況の中でも、官民が連携して、大切な文化や生業を守れるような持続可能な自治体になっていければ良いなと思っています。(美濃市)
地域で暮らす中で、祭りで神輿を担ぐ人がだんだん減っているなどの話を聞くと、とても悲しく思います。ホテル業や観光業を通じてファンを増やし、市外の関係人口によって文化を支えられる仕組みを構築できればと思っています。(みのまちや)
岐阜県には42の市町村があり、美濃市のような人口1~2万規模の自治体が多いです。今回の成功事例が岐阜県内に広がることで、これからも多くの相談が寄せられるのではないかと思っています。そういった地域の皆様の熱意には必ずお応えしたいと思っています。(十六銀行)
美濃市の連携事例