地方創生SDGs官民連携プラットフォームで情報収集。他の自治体の連携事例を庁内の業務改善にも活用 – 白井市
千葉県白井市
白井市の官民連携の取組について、同市の企画財政部 企画政策課の多納 様にお話を伺います。本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
白井市の官民連携の状況
最初に、これまでの白井市の官民連携の取組について教えてください。
防災系など、個別の分野で事業者と協定を結ぶ取組は昔からやっていましたが、令和に入る頃から包括的な官民連携の取組が徐々に増え始めました。
本市では、令和4年に「官民連携に関する基本方針」を策定してHPに公開し、その方針を基に現在では14の事業者と13の包括連携協定を結んでいます。
協定を締結することが目的ではなく、協定締結することでお互いにどのような取組が実施できるか、如何に住民サービスを向上させることができるかが重要であると考えており、
以前より個々の取組を行っていた事業者と度々顔を合わせるなかでお互いのメリットに気付き、協定の締結に至ったというケースもあります。
取組について説明する 企画財政部 企画政策課 主査補 多納 様
「官民連携に関する基本方針」の策定には、どのような背景があったのでしょうか。
令和に入って地方創生の機運が高まり、官民連携を進めていく必要性が増してきたものの、職員の間では官民連携そのものを疑問視する声もありました。
さらに、外部に対しても窓口や取組などを発信できていない状況でした。
そこで、「白井市はこういう方針で官民連携を進めます」という方向性を明確にして内外に示す必要があるという考えに至り、私が課長に提案して話を進めていきました。
トップダウンではなく、個人や部署主導で官民連携を推進していく流れになったのですね。
そうですね。ただ、多くの自治体で官民連携の取組が盛り上がっていたこともありましたし、なにより、市長が官民連携や市民協働に熱量があり、
理解があったのが非常に大きかったです。
現在、白井市として官民連携についてどのように発信されているのでしょうか。
官民連携の特設ページを作り、白井市のトップページからすぐに飛べるようにしています。
市の官民連携に対する考え方といった基本的な部分や、包括連携に基づき実施した取組なども載せて定期的に更新しています。
事業者からしても、市が一度プレスリリースをしただけではなく、市のページに取組実績として掲載される方が良いと思っています。
地方創生SDGs官民連携プラットフォームの活用状況
掲載終了も含めると20件近くの課題を登録されていますが、どのような流れで登録しているのでしょうか。
企画政策課が庁内の業務を比較的把握しやすいポジションということもあり、当課で登録することが多いですが、アカウントを持っている庁内の部署がそれぞれ個別に課題を登録しているケースもあります。
当課は行政評価を行う部署なので、ヒアリングを行ったときや個別に事業の相談を受けたときなどに、
各部署に地方創生SDGs官民連携プラットフォームの活用方法や、プラットフォーム上の参考になりそうな官民連携事例を紹介しています。
地方創生SDGs官民連携プラットフォームを情報収集の手段としても活用いただいているんですね。 それでは、課題に対して民間企業から提案があったとき、内部ではどのように対応しているのでしょうか。
基本的には企画政策課が窓口になりますが、それぞれの部署で投稿したものは、部署自身で確認できるので個別に対応してもらっています。
企画政策課が市全体の課題の状況を見たときに、反応が遅れていると感じたときなどは、その部署に確認することもあります。
なるほど。周知だけでなく、進捗管理も行っていただいているんですね。
そうですね。他にも3ヵ月に1回程度、「地方創生SDGs官民連携プラットフォームを使いませんか?」といった庁内覧を企画政策課から流しています。
ただ、職員がそれぞれ忙しいのもありますし、そもそも官民連携ツールを知らない人もいます。
こちらから声を掛けると載せてくれることもありますが、もっと職員から活発な相談が来るようにできないか、とは思っています。
連携事例の実績
官民連携での成功事例について教えてください。
地方創生SDGs官民連携プラットフォームにも掲載されている事例になりますが、白井市における健康課題の解決に向け、
大塚製薬株式会社をはじめとする市の関係事業者と協働して「白井市健康会議」を実施しました。
健康問題である「熱中症」をテーマに、包括連携協定の有無に関わらず、様々な事業者の方に参加いただき、
ポスターによる熱中症対策の啓発や気象予報士のくぼてんき氏を招いた熱中症対策セミナー、
市職員・学校養護職員・参加事業者の従業員などを対象とした熱中症アドバイザー取得推進等の啓発事業を実施しました。
これは、包括連携協定を結んでいた事業者からお声がけいただいたのがきっかけで、白井市独自の官民連携の動きから生まれたものです。
包括連携協定を結んだ企業とは、定期的に課題共有などを行っているのでしょうか。
基本的には、課題が生まれてから協力いただけそうな事業者に相談するという流れです。定例会などは特に行っていません。
最近の例だと、環境部門が実施している「森のグラウンドワーク推進事業」の担い手が不足しており、包括連携事業者に相談を持ち掛けたところ、協働の取組につながった事例もあります。
さまざまなきっかけで連携事例が生まれているのですね。地方創生SDGs官民連携プラットフォームを活用した成功事例はありますか。
高い専門性や多くの経験をもつ人材を登録、紹介している事業者と包括連携協定を結び、白井市にアドバイザーを仲介してもらいました。
複数の部署で、アドバイザーから業務に関する助言や提案をしていただいて、実際に大きな効果がありました。今年の6月には市長に成果報告会を実施した成功事例です。
白井市の名産品
それは実現に至るまで、どのような流れだったのでしょうか。
実はこの成功事例は、全く別の課題を地方創生SDGs官民連携プラットフォームに登録していたのがきっかけです。
白井市には、「じねんじゃー」という自然薯をモチーフにした非公式キャラクターがおり、
その活動に協力いただける事業者はいないかと地方創生SDGs官民連携プラットフォームに投稿したところ、
事業者から「優秀な人材をアドバイザーとしてマッチングすることができます」と提案していただきました。
そこから別の課題の解決に資するのではないかとの話が持ち上がり、最終的には、庁内の業務改善の手段としてアドバイザーを活用させていただきました。
市全体の課題感
市全体の課題などはありますでしょうか。
白井市は千葉ニュータウンのまちびらきにあわせ人口を増やしてきましたが、開発からおよそ40年が経ち、建造物が老朽化する一方で、
人口構成もニュータウンとともに入居した世代が高齢化することでまち全体としても急速に高齢化が進展するなど、さまざまな課題を抱えています。
そのような中で市民のニーズは多様化の一途をたどっており、その市民のニーズに応えるうえでも、行政の限られたリソースを有効に活用するために官民連携の重要性は増していると思います。
自治体の課題解決には、官民連携は重要な要素でしょうか。
そうですね。例えば、駅周辺活性化事業では、街にどんな機能が必要なのかを社会実験しながら市民の声を多く取り入れるような取組をしました。
包括連携協定を結んでいる事業者には、アンケート調査などに協力いただいた市民の方に渡すお礼の品などを提供いただいたりしていますが、
行政だけでは実施できない取組をできることや事業者の手を借りることで行政だけでは届かない層にもリーチできるという部分に官民連携の強みを感じます。
最後に、改めて官民連携についての考えをお聞かせください。
行政が中心となるべきところはしっかりやる、事業者が対応できる部分は対応いただく。そして、連携できる部分は連携してそれぞれの強みを活かす。
その結果として、市民に対するサービスは総合的に向上するだろうと思っています。
千葉県北西部のエリアでは、地方創生SDGs官民連携プラットフォームの話が話題になっており、白井市だけでなく、さまざまな地域で官民連携の重要度は高まっていると思います。
一方で、自分の仕事を抱えているなかで、新たな業務として官民連携に携わるメリットが見出しづらい、という職員もまだまだいます。
このような職員にも官民連携のメリットを伝え、地方創生SDGs官民連携プラットフォームの活用をもっと広げていきたいと思っています。
なるほど、市民ニーズに応え、市としての課題を解決するためには、官民連携によって行政と事業者それぞれの強みを適切に活用していくことが重要ということですね。 独自の方針を策定したり、包括連携協定の取組も進めてしているなど官民連携に対する取組に積極的ですが、 地方創生SDGs官民連携プラットフォームも引き続きご活用いただければと思います。本日はありがとうございました。
ありがとうございました。