サンゴの村から生まれる共創
恩納村が「UNNA魂プロジェクト」で描くSDGs

沖縄県恩納村
沖縄県恩納村は、美しい自然と豊かな文化を持つ一方で、若者の流出や地元産の果樹や野菜を使った加工特産品が少ないといった地域課題に直面してきました。こうした課題の解決を目指し、恩納村では「UNNA魂プロジェクト」(うんな=方言で恩納)を通じて、行政と民間、そして地域の中学生が一体となり、未来を切り拓くユニークな挑戦を続けています。本記事では、単なる教育プログラムにとどまらない、この革新的な官民連携プロジェクトの舞台裏を、担当者へのインタビューを基に紐解いていきます。

プロジェクトの概要と発足の背景

「UNNA魂プロジェクト」とは、どのような目的で発足したのですか?
また、プロジェクトが始まった経緯について教えてください。

「UNNA魂プロジェクト」は、中学生と共に恩納村が抱える地域課題の解決と村の新たな魅力の創出、未来を担う人材の育成を目指す、2020年から2030年までの10年間の長期プロジェクトです。特に村長が掲げる「企業を立ち上げられるような発想力のある子どもたちを育てたい」という目標を具現化するために始まりました。SDGsの2030年ゴール達成に合わせた長期計画として、持続可能な村づくりを推進しています。

このプロジェクトが発足した背景には、いくつかの要素が重なっています。まず、村内5つの中学校が1つに統合されたことを機に、地域の子どもたちを応援するエネルギーを一つに集約しようという機運が高まりました。そこに、国・県からの助言、協力者の紹介などの後押しやコロナ禍での新たな目標設定の必要性が重なり、「何か面白い取り組みを始めたい」という強い思いが形になったのです。特産品開発や観光消費額の向上といった、具体的な課題にも向き合いながら、子どもたちの成長を促す相乗効果を生む取り組みと言えるでしょう。

中学生のひらめきが形になる、年度ごとの具体的な取り組み

これまでのプロジェクトでは、具体的にどのような取り組みが行われてきましたか?
また、特に印象的な成果があれば教えてください。

「UNNA魂プロジェクト」では、毎年SDGsの「環境・経済・社会」という3つの柱をテーマに、中学生が主体となってプロジェクトを進めています。

これまでの主な取り組みは以下の通りです。

年度 テーマ 主な取り組み
令和3年度 特産品開発
  • 「サンゴの村」ならではの「ちゅらかふUVカットミルク」を開発
  • パッションフルーツやアテモヤを使った商品開発を実施
令和4年度 防災と環境
  • 避難経路を調べる防災アプリ開発
  • 軽石を再利用したキーホルダー作り
  • アーサを使った堅あげポテトの商品開発
令和5年度 社会インフラとPR
  • 下水道の整備率向上を目指したデザインマンホールの企画・設置
  • 歴史的な道のPR動画を制作し、テレビCMの放映
  • 防災食の提案
令和6年度 循環型社会と人材育成
  • 不要になった古紙をトイレットペーパーに再利用する循環システムの構築
  • 環境学習コンテンツ(赤土流出の課題)をPepper君にプログラムし、小学生向けに授業を実施。
  • 恩納村の多様性な未来をマインクラフト(Minecraft)で作成し提案した。

これまでの取り組みの中でも、特に令和3年度に開発された「ちゅらかふUVカットミルク」は、大きな反響を呼びました。 恩納村が掲げる「サンゴの村宣言」に沿った、環境に優しい日焼け止めとして、村のダイビングショップでも取り扱われ、販売後には「継続して販売してほしい」という問い合わせが多数寄せられるほどでした。

また、令和5年度に制作したPR動画も、その後の広報活動に大きな効果をもたらしています。 学生たちのユニークな視点から作られた動画は、これまでの行政のPRとは異なる形で人々の関心を引きつけ、村への来訪を促すきっかけにもなりました。

村が抱える課題を中学生が解決していくために行政職員が協力いただける企業を探しだし、民間企業の力を借りて解決策を導くという産官学が連携した特徴的な取り組みとなっています。

これらの活動は、中学生が自ら課題を発見し、解決策を導き出す貴重な機会となっているだけでなく、教育の枠に収まらず自分たちが住んでいる地域を支える、盛り上げる一員として自覚できる取り組みとなっています。

民間企業にとってはこの活動をとおして自社の魅力をPRでき、若い世代から率直な意見をフィードバックされることでインスピレーションを受けたり、他分野企業との新たな接点の場となっています。また、行政にとっても部署を超えた協力体制の構築や民間企業と疑似的に協業するように取り組むことから職員個人のスキルアップにつながって一石三鳥にも四鳥にもなっています。

挑戦がもたらした変化|生徒、行政、そして地域

このプロジェクトは、生徒たちや行政、地域にどのような変化をもたらしましたか?

このプロジェクトは、多方面にわたるポジティブな影響を生み出しています。

まず、生徒たちは、自分たちで「目指せ1000万円!」といった目標を掲げ、商品開発のプロセスや利益構造、ターゲット設定などを自ら考えることで、社会の仕組みを深く理解するようになりました。探究学習は、時には4コマ連続で行われることもあり、生徒たちにとっては決して楽な時間ではありません。しかし、「大変だけど、やりがいがある」と語る生徒がほとんどで、誰一人として怠けることなく、主体的に課題に取り組む姿が見られました。

商品開発では、パッションフルーツをテーマにした際に、「笑顔」と「酢」をかけた「パッと酢まいる」というユニークな商品名を生み出すなど、既存の枠にとらわれない発想力も育まれています。これまでに培ってきた実践的な経験は、高校や大学、その後の進路選択にも影響を与えており、プロジェクトの第一期生を追跡調査したところ、中学校卒業後に生徒会役員等として学校で中心的な存在となる生徒が増えています。また、村の課題解決に貢献する中で郷土愛を育み、将来的に恩納村に戻って地域に貢献したいという思いを持つようになりました。

次に、行政職員や教員にも変化が生まれました。企業から派遣された講師との連携を通じて、行政職員は自らのスキルアップに繋がり、教員も生徒からの意見の引き出し方や、社会の動きを学ぶ機会を得ています。最初は新しい取り組みに抵抗感を持っていた教員も、生徒たちが楽しんで主体的に学ぶ姿を見て、自らも「一緒に学ぶ」姿勢に変わっていきました。

そして、地域社会全体にも良い影響が広がっています。中学生のアイデアから生まれた商品は、村の新しいお土産として観光客に喜ばれ、村のPRに貢献しています。このプロジェクトを通じて、異世代間の交流が生まれ、地域全体の一体感醸成にもつながりました。

全国に広がるパートナー|プラットフォームがつなぐ縁

プラットフォームは、どのように活用していますか?
また、民間企業との連携において、企業版ふるさと納税なども活用されているとお伺いしました。

(2024年12月20日官民MEET沖縄)

恩納村は2018年の「サンゴの村宣言」と2019年のSDGs未来都市選定をきっかけに、SDGsに関する知識や企業との連携を求めてプラットフォームに登録しました。これまでは活用の機会が少なかったものの、昨年度からは官民MEETへの参加やオンラインでの広報活動に積極的に活用しています。

官民MEETでのマッチングは特に効果を実感しており、東京や沖縄など全国の事業者から多数の問い合わせが寄せられ、現在も5〜6社と具体的な打ち合わせを進めています。大企業だけでなく、ニッチな分野で独自の視点を持つ企業からのアプローチも多く、行政や学校だけでは気づけなかった村の新しい資源を発掘するきっかけにもなっています。この取り組みは、行政だけでは進められない専門的な知識やノウハウを、企業の力を借りて補う上で非常に重要だと考えています。

また、プロジェクトの財源確保には、企業版ふるさと納税も活用しています。企業にとって、CSR(企業の社会的責任)の一環として関わるケースが多いですが、恩納村としては単なる貢献活動に終わらせず、動画で企業名やロゴを明示するなど、企業側の利益にもつながるような関係を築くことを目指しています。こうした継続的な関わりが、さらなる連携を呼び込む好循環を生み出しています。

課題と今後の展望|持続可能な村づくりを目指して

(恩納村2030年のあるべき姿イメージ図)

プロジェクトの継続と拡大、そして今後の課題についてお聞かせください。

「UNNA魂プロジェクト」は、SDGsの2030年ゴールに合わせて10年間継続する計画です。今後は、当初の参加生徒たちが将来的に教える側としてプロジェクトに関わってくれることを期待しており、若者の村外流出を防ぎ、定住を促進することも目的の一つです。

一方、課題もいくつかあります。行政としての広報活動はまだ弱いと認識しており、今後はSNSなどを活用した発信を強化していく必要があります。また、行政内部での職員の業務負担軽減や意識改革も重要な課題です。「縦割りを打ち壊す」という強い意思を持ってプロジェクトを推進していますが、組織全体がこの取り組みに深く関わり、支えていくことが今後も継続の鍵となります。

恩納村は、このプロジェクトを通じて、次世代を育むための種を蒔き、2030年、そしてその先へと加速させていくことを目指しています。これは、行政、企業、教育機関、そして住民が一体となって取り組む、持続可能な未来に向けた大きな挑戦だと感じています。

若者の流出や特産品不足といった課題に対し、官民、そしてこどもたちが一体となって取り組むことで、未来を担う人材と地域の活力が同時に育まれているのですね。この素晴らしい取り組みが、持続可能な未来に向けた大きな挑戦として、さらに広がることを心から願っています。本日はありがとうございました。

他自治体の声