地方創生SDGs国際フォーラム 2023
イノベーションがリードする新しい『持続可能なまちづくり』の実現
フォーラム概要
感染症やエネルギー・食料危機、さらには温暖化による気候変動。加えて、日本では、人口減少や少子高齢化など、様々な社会課題に直面しています。
政府は、「デジタル田園都市国家構想基本方針」において、地方の社会課題を成長のエンジンへと転換していくために、「官か民か」ではなく「官と民と」が協働して経済成長を実現することを掲げています。この地域活性化に向けて、内閣府では、「SDGsを原動力とした地方創生の実現(地方創生SDGs)」を目指しています。
「地方創生SDGs国際フォーラム2023」では、GX(グリーン・トランスフォーメーション)・DX(デジタル・トランスフォーメーション)・スタートアップなど、イノベーションによる持続可能なまちづくりの形成や先進的な地域活性化の取組を共有・発信します。
その上で、本フォーラムでの発信・議論を契機とし、様々なイノベーションによる社会課題解決を加速させ、地方創生SDGsの深化・拡大を目指します。
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開催報告
開催概要
2023年2月7日(火)、「地方創生SDGs国際フォーラム2023」が内閣府、地方創生SDGs官民連携プラットフォームの共催により、開催された。
本フォーラムは、「イノベーションがリードする新しい『持続可能なまちづくり』の実現」をテーマとして、 会場参加(日経ホール 東京・大手町)とオンライン参加(WEB配信)を併用したハイブリッド形式で開催し、国内外から約1,700名が参加した。
開会挨拶
冒頭、岡田大臣は「デジタルの力を活用した地方の社会課題解決の重要な政策目標の一つとして、地方創生SDGsの推進による持続可能なまちづくりが位置付けられている」とし、「地域におけるSDGsの達成にむけては地方公共団体だけでなく、民間企業等との連携が重要で、2025年大阪関西万博との連携もさらに進め、全国における官民連携の機運を高めていきたい」と語った。そして「本フォーラムを契機として、地域におけるSDGsの取組にさらなる弾みをつけるとともに、官も民も協働して国内外の連携によりSDGsの推進を図ることで日本の地方創生につながることを期待したい」と述べた。
地方創生SDGs官民連携プラットフォーム会長の北九州市・北橋市長は、今年で5年目を迎えた本フォーラムがこれまで行ってきた活動に言及するとともに、「大阪関西万博と連携し、SDGsの達成と地域課題の解決を通じた持続可能なまちづくりの実現に向けて、取組の加速化を図っていきたい」と語った。そして、「本フォーラムで得た知見を地域の活性化に結び付け、より実効性の高い地域創生の取組に繋がることを期待したい」と述べた。
基調講演「官民連携で推進する地方創生SDGs」
村上氏は、「官民連携で推進する地方創生SDGs」と題して、「政府による地方創生SDGsの取組」、「内閣府における官民連携SDGsの推進」、「今後の方向性:SDGsの取組の一層の深化」の3つの論点において、日本のSDGsの取組が国際的にどう評価されているかを紹介し、「地道な努力がまちづくりの高い評価につながっている」と述べた。
また、これまでの政府の施策を振り返りながら、稼ぐ地域形成のための自治体SDGsと企業SDGsの連携を通じた地域経済活性化について、社会課題の解決に向けた取組や、SDGs未来都市における地域産業振興の事例を踏まえて話を進めた。
さらに、地域経済をどう活性化させるかということが重要な課題であるとし、中長期の視点からSDGsの成果を評しっかりと評価していくことに加え、地道な継続を通じた官民連携による地方創生SDGsの推進が必要であると説いた。
特別講演①「デジタルの社会実装による地域の社会課題解決」
特別講演①では、持続可能な社会の発展に向けて、地方自治体や地域とのつながりを深め、5GやAI、ICTなどのデジタル・テクノロジーの力で、事業・企業活動を通じた社会課題解決、SDGsの達成に取り組んでいる、ソフトバンク株式会社 宮川社長を招き、「デジタルの社会実装による地域の社会課題解決」をテーマにお話しいただいた。
冒頭、「100年後、私たちの住む地球はどうなっているだろうか」と切り出し、地球誕生からの歴史を振り返りながら、近年、急激に地球温暖化が進んでいる現状を示し、今後の温暖化による危機的な見通しを、さまざまなデータを示しながら述べた。
続いて、人類は、過去の反省を深く受け止めて、次世代のために、環境・社会・経済が持続的に発展するサスティナビリティな社会を作らなければならないと述べ、IoTやAI、ビッグデータを用いて自立化・最適化する第4次産業革命そのものが、サスティナブルな社会の実現につながるとし、その実現に向けてオランダアムステルダムや、長野県伊那市、東京都利島村等の国内外のさまざまな取組を紹介した。
最後に、地域ごとに異なる課題に直面している日本においては、サスティナビリティの実現には官民が連携し課題を共有すること、そして、次世代の子どもたちに安心して暮らせる日本・地球を残すために、本気で議論し、実行することが重要であると説いた。
セッション①「カーボンニュートラル・デジタルを原動力とした地域課題解決」
セッション1は、GXとDXを原動力とした地域課題解決に向けた各種の取組を、共有・発信することにより、国内外の地方創生、地域活性化の取組が促進することを目的として、「カーボンニュートラル・デジタルを原動力とした地域課題解決」をテーマとして開催された。
まず、冒頭にパネリスト5名は以下のテーマでそれぞれの取組や活動の事例共有を行った。
「脱炭素・デジタル化実装による持続可能な循環型まちづくり」、「官民連携でのEVを活用したまちづくり」、「ストックホルム県知事のVTRを紹介し、デジタル化の取組みを中心に、地方の可能性」、「スマートタウン・カーボンニュートラルに取り組む経緯・取組」。
ディスカッションでは論点2つが議論され、最初の論点「脱炭素の実装化の方向性・促す仕組み」では「脱炭素の官民連携における官民の担うべき役割」や、「民間企業との連携のポイント」について、内藤氏が「自分ごと化する市民・企業を増やす仕組みを構築していくことが重要である」と、また後藤氏は「環境や防災など様々な電気自動車(EV)の価値を知ってもらうために、もっとEVを普及させていたい」と主張した。次の論点「デジタル化を取り込んだ地域活性化」では、ヘーグベリ氏は「スウェーデンがデジタル競争力世界3位になった要因、そして、マイナンバーの制度についてのスウェーデンでの取組やデジタル化と社会の在り方」について言及し、竹中氏は「デジタル化によって都市と地方との時間短縮が可能になったことにより、都市と地方の格差是正につながる」と主張した。
議論を受け、西氏は「多様なパートナーシップを構築しながら地域課題解決を強力に推し進めていくこと、またその多様なパートナーシップから『自分ごと化』して取組を進めていくこが重要である」と述べるとともに、「海外の事例にあったように、DX・GXを進めることで人口が増え、雇用が増え、持続可能な世界に繋がるという循環を、日本の各地域でも実現できるよう、様々な新しい取組を政府として後押ししていきたい」とし、締めくくった。
特別講演②「地方創生 ~レスポンシブルツーリズムの実践~」
特別講演②では、全国の地方自治体と持続可能なツーリズムの推進に取り組み、国内外の旅行者にその土地の文化や魅力を活かしたその土地ならではの新たな観光の提案を行っている、星野リゾート 星野代表を招き、「地方創生 ~レスポンシブルツーリズムの実践~」をテーマにお話しいただいた。
本テーマでは、長門湯本での活動実績をもとに、官民連携のポイントとして、星野リゾートが所有する旅館の敷地だけではなく、温泉街全体としてのマスタープランを作る必要性、さらにその上で重要視した点を3つ挙げた。
1:日本の観光地の多くの場所が団体旅行や周遊旅行に適していた中で、個人型・滞在型に対応できるように観光産業のDX化をすること。
2:個人型・滞在型をターゲットとし、インバウンドも含めた当ターゲット層に対してDXを通じて、現地から直接情報発信すること。
3:「地域人材のパワー × 外部人材の専門性」が重要で、これを実現するための世代交代(若手地域人材の活躍)をすること。
さらに、上記3点に基づき、長門湯本で取り組んだ具体的な活動を紹介した。
次に、コロナ禍で起こった世界の観光地の変化と、アフターコロナにおける観光業界が新たに進むべき姿について海外の様々な実例を紹介し、今後の日本の取組として
1)現代の観光市場ターゲットのマスタープラン
2)競争力ある観光地の質を満たすハードとソフト
3)観光地マネジメントの組織体制
4)持続可能な競争力を意味する新KPI
の4項目が重要であると説明した。
そして、今後の観光産業では、地元住民、観光客、それぞれがフェアなリターンをもらえるような仕組み作りが必要と主張した。
セッション②「官民連携を通じた持続可能なまちづくりの実現」
セッション②は、官民連携の先進事例の共有を図り、民間のノウハウや行政の役割や課題について話し合い、地域の課題解決・魅力向上・地域経済の活性化のポイントを理解することを目的として、「官民連携を通じた持続可能なまちづくりの実現」をテーマとして開催された。
パネリスト4名は以下のテーマでそれぞれの取組や活動の事例共有を行った。
「ふるさと納税からワーケーションまで官民連携が生む関係人口創出」、「日本における観光の今後を見据えたまちづくり」、「まちづくり=課題解決のためのあらゆる事業デザイン」、「地域人材の育成」。
ディスカッションでは、「社会課題から切り開く持続可能なまちづくりに向けた官民の役割」を論点に、議論が展開され、小林氏が「ふるさと納税からワーケーションまでつなげていくために、地元の方々の意欲を結び付けていくことが重要である」と、またカー氏は「観光を通じて街の魅力を伝えていくために、国の補助金を引き金として古い民家や街並みの再生をし、地域の人が経営することによって地域が潤う」と、山中氏は「地方には、当事者意識の欠如と経営者不足の2つの課題があり、地方で民間が活性化するためには、民間が自立し行政がサポートすることが必要。」と、田中氏は「リーダーシップが取れる人・ビジョンの共有が重要であり、あきらめない姿勢が必要である」と主張した。
議論を受け、蟹江氏は「自分たちで率先してやっていくという意欲を持ち、官と民とが関係性を強化し、本日の議論をきっかけとして、新たな好循環が地方から創出され、持続可能な地域の連携が実現していくことを期待する」と締めくくった。
特別講演③「サッカーチームを通じた、地域の魅力向上に向けて」
特別講演③では、メルカリの会長を務め、さらに鹿島アントラーズを通じて、グループが持つテクノロジーやアセットを最大限に活用しながら、ホームタウン、パートナー企業、そしてサッカーを愛する方々とともに地域の発展や持続可能な社会の実現を目指している、株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シー 代表取締役の小泉社長を招き、「サッカーチームを通じた、地域の魅力向上に向けて」をテーマにお話しいただいた。
冒頭、「ネット企業がサッカーチーム並びにその先にある街づくりへの取組について、今後挑戦したいことも含めお伝えしたい」と切り出した。
長年インターネット業界にいた小泉氏が、
・インターネットを駆使し、さまざまな方々に来場いただくための取組
・スポンサーと地域を結びつけていくために、コールセンターの企業を誘致し街の雇用に繋げるなどの取組
・ホームタウン5市との連携協定を結び観光ビジネスへ参入するなど、行政との取組
・スタジアムを使った地域への貢献の取組として、スタジアム内にスポーツジムやスポーツクリニックの設立などの取組
・人口が少ない商圏で、収益も得ながら地域にも貢献していくために、スタジアムをラボ化し様々な実証実験を行い、スタジアムを防災拠点化し、震災時の情報発信拠点として活用するなどパートナー企業との取組など、
サッカーチームを通じた、地域課題の解決や地域の活性化に向けたさまざまな取組や活動を紹介した。そして今後はさらに「新スタジアムを中心にした街づくりを行政と二人三脚で市民も巻き込んでやっていきたい」と語った。
最後に、どんなスポーツでも、ステークホルダーをいかに地域と結びつけながら街を元気にしていけるのかを考えることが重要であると説いた。
2022年度 地方創生SDGs官民連携優良事例表彰式
特別講演③に続き、「2022年度 地方創生SDGs官民連携優良事例表彰式」が執り行われた。「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」は、持続可能なまちづくり・地方創生の実現に向けて、自治体や民間企業等の多様なパートナーシップを深める場として、2018年8月に設置され、その事業の一環として、地方創生SDGs官民連携優良事例を公募し、選定している。
今年度は新たに内閣府地方創生推進事務局長賞を設け、全国の自治体・民間企業等から応募のあった77件の官民連携取組について、一般投票による一次選考、選考委員による二次選考を経て、以下6件を優良事例として選定し、この中から特に地域の模範となる先進的な1件を内閣府地方創生推進事務局長賞として表彰した。
- 「新たな官民連携手法である国内初のLABV(官民協働開発事業体)を活用したまちづくりプロジェクト」
山口県山陽小野田市×山陽小野田LABVプロジェクト合同会社
- 「自治体による粗大ごみのネット販売等でのごみ減量とリユース推進」
愛知県蒲郡市×株式会社メルカリ - 「医福食農連携で高齢者の低栄養予防に資する健康支援型配食サービス」
高知県計画推進課×一般社団法人在宅栄養ケア推進基金 - 「介護施設における夜間の効率的なオンコール対応モデルの構築」
福岡県北九州市×ドクターメイト株式会社
- 「ふくしまSDGs博」
福島県×福島民報社(ふくしまSDGsプロジェクト推進コンソーシアム) - 「互助×ICTを活用した持続可能な多世代型の支え合える地域作り」
奈良県天理市×みまもりあいプロジェクト
総括
フォーラムの最後に一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター村上理事長は以下のように総括した。
・先導的なモデルとしての「SDGs未来都市」は154となり、「官民連携プラットフォーム」に参加する自治体会員は1,100、企業会員は5,800を超え、SDGsを共通言語とする多様なステークホルダーと共に全国的なプラットフォームに成長した。
・SDGsに活発に取組む地域企業を自治体と金融機関が共同で支援する制度も創設されている。
・地方創生SDGsは、イノベーションを通じた地域活性化の促進に取り組むことにより、GXやDXを推進している。
・「デジタル田園都市国家構想総合戦略」における4つの基本目標である「雇用」「一極集中是正」「人口増」「生活」に「グリーン」と「デジタル」の側面から切り込む取組を合わせ、地方創生SDGs官民連携プラットフォームの活動と補完しあうことを進めている。
・地方創生に資するこれらの幅広いSDGsの取組は世界に例を見ないものである。
日本の各地域で実践、達成されている優れた取組や経験を世界に発信し世界で共有することは、グローバルなレベルでの日本のSDGsの進展に貢献するものである.
関連イベント
地方創生SDGs国際フォーラム2023の開催に合わせ、2つの関連イベントが開催された。
・内閣府、地方創生SDGs官民連携プラットフォーム主催
「2022年度 地方創生SDGs官民連携優良事例 取組紹介」
・公益社団法人2025年日本国際博覧会協会主催
「大阪・関西万博の盛り上がり~官民連携による持続可能な地域活性化~」
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